ホイスト停止警告器の作成

2017/6/6
〇ホイスト停止警告器とは
 ホイスト(天井クレーン)が壁際のストッパーに当たる前に、警告音を鳴らす装置です。
ホイストは、建物の壁に直接衝突しないように、下記のようなストッパー(衝突板)に当たるようになっています。ホイスト側にはゴムバッファーというゴム製の緩衝部品がついていて、衝突力を吸収する構造になっています。


 ただ、ゴムバッファーは完全に衝撃を吸収することはできないため、ある程度の振動は建物に伝わってしまいます。当社は工場と事務所が一体化していることもあり、建物の端にあるホイストの衝撃が、反対側の端にある私の部屋まで伝わり、地震か!と思ってビックリすることが、度たびありました。この問題を解決するため、ストッパー衝突直前にブザーを鳴らし、作業者に停止のタイミングを知らせる警告装置をつくることにしました。

〇リミットスイッチで簡単にできそうだが...
 最初は、リミットスイッチ(レバーが倒れることでONになるスイッチ)と、ブザーで簡単に作れると思っていました。リミットスイッチのメリットは...
  • 動作が確実
    メカ的なものなので
  • 電源ケーブルがいらない
    接点だけなので、電線2本を天井まで配線するだけ。



〇ブラケットを付けるのが難しい
 課題は「どこにどうやってリミットスイッチをつけるか?」でした。天井クレーンは、H鋼材の上を行き来しています。リミットスイッチをレール(H鋼)に直接付けられませんが、ブラケット(何かをとりつけるための補助金具)を作成すればなんとかなると考えていました。
 レールは重量がかかる部分なので、あまり穴あけはしたくありません。具体的に、ブラケットの形状を検討し始めると、H鋼材にブラケットを固定する方法が思いつかず、煮詰まってしまいました。とりあえず、ストッパー周辺を調べるべく、実際に天井まで登ってみることにしました。

 天井は2Fまで吹き抜けなので6メートルくらいの高さがあります。現場(ストッパー付近)は身を置く場所すらほとんどなく、片手は常に体を支えている必要がありました。これでは、穴あけどころか両手をつかうような作業が無理です。もちろん下から足場を組めばできますが、かなりの費用と、仕事への支障を生じてきます。どうも雲行きがあやしくなってきました。

 苦肉の策で、ストッパーにかぶせるようなブラケットを思いつきました。しかし図面を描き始めて、この方法では衝突3cm前位からしか感知できないことに気づきました。この時点で、リミットスイッチによる検知は断念せざるをえませんでした。

〇測距センサーしかないかも...
 こうなると、設置が簡単にできることを念頭に方法を考える必要があります。産業用のセンサーは、サイズが大きいので固定方法の問題が必ず発生してきます。できれは電子機器関連の小型軽量センサーを両面テープで付けるくらいの簡便な方法でないと素人では設置できなさそうです。ただ今回は社内設備なので、このような安直な方法でも問題にはなりません。具体的に使えそうなセンサーは、近接センサーと測距センサーくらいしか思いつきませんでした。ほかにもありそうですが、設置を考えると、やはり限られてきそうです。

 近接センサーには、磁石でスイッチをON・OFFするものがあります。構造が単純で電源も不要ですが、今回の場合、ホイスト側に磁石を取り付ける必要があるのと、磁石とスイッチの間の距離(数ミリ)の調整が必要なので、設置はともかく調整が難しそうです。
 測距センサーは、対処物との距離を非接触で測定するセンサーです。最初から案としてはありましたが、他のセンサーと比較すると、構成が複雑になり、下記のような問題があるで、あまり採用したくない方法でした。

  1. 測距センサーの測定精度が不安
    距離が知りたいわけではないが、精度が悪いと目的が達成できない。少ないとも5mm程度の繰り返し精度がほしい
  2. 電源及び信号線が必要
    単純なスイッチではないので、電源やら信号線やらが必要になってくる。
  3. マイコン等を使う必要がでてくる
    設定距離との判別する必要あるのでマイコンとプログラムが必要になる
  4. プログラムの書き換えがやっかい
    センサーとは通信の関係上、マイコンは近くにないといけない。そうなるとプログラムの書き換えのたびに、天井まで登らないといけなくなる

〇VL6180Xならできるかも
 過去に測距センサーを使用したことはありますが、一般的な測距センサーは精度がいいかげんすぎて、ラフな近接センサーとしてしか使えないという印象でした。今回の場合、ある位置で±10mm程度の精度がないと、目的が達成できません。
ネットで検索すると、VL6180Xという光の速度で測距できるセンサーがありました。測定距離は10cm以内ですが1mmの精度があるようで、今回の目的に使えそうなスペックです。

これで問題1はクリアできそうです。問題2と3は、あきらめて頑張るしかありません。問題4は、定番のESP-WROOM-02で回避することにしました。

〇できたもの

設置前に、ダンボールで模擬装置を作成しました。固定は簡単な治具+両面テープとし、片手でも設置できるように工夫しました。

 ゴムバッファの代わりに"お椀"をつけてあります。なぜここまでするかというと、測距センサーというのは、どこまで(対象物)の距離を測っているのか良く分からないという問題があるからです。対象物は、平ら(凹凸がない)であるとは限りませんし、測定面がセンサーと直角とは限りません。今回の場合、ゴムバッファという突起物があるため、これがどの適度、計測に影響するかを確認する必要があったからです。
結果は、突起物の影響は見られず、センサーと正面(ホイスト)との距離を測定しているようでした。

 精度に関しては、スペックどおり1mm程度の精度はあるようでした。平滑化はしていますが、停止状態のブレもほぼ1mm程度です。ただ絶対距離の精度に関しては、±5mmから±10mm程度の誤差は発生します。距離が遠くなると誤差が大きくなるようです(データシートには詳しく書かれています)。255mmまでは計測できますが、やはり100mm以内で使った方がよさそうな感じです。計測時の環境光にも影響されるようで、このあたりは、もうちょっと勉強してプログラムにも手を入れる必要がありますが、とりあえず、実用レベルであると判断しています。

 マイコン(ESP-WROOM-02)への電源供給は、12mのUSBケーブル・エクステンダーで行うことにしました。WiFiでプログラムの書き換えも行えるようするのですが、万が一、WiFiでトラブルが生じても、USB接続でプログラムの書き換えができるようにするためです。

設定画面は下記にようにしました。
 これで、ブザー警告距離は、設置後でも簡単に変更ができます。送信先IP、Portは、測定距離をUDPでスマホ等に送信するためのものです。運用時には必要ありませんが、リアルタイムで状態を把握できるので、設置時にはあった方が便利です。(今回は、USBケーブルにノートPCを繋いでシリアル通信で確認することも可能です。せっかくESP-WROOM-02を使っているのですからIoT機器っぽい機能を付けてみました)

〇計測テストの動画
模擬動作テストの様子を動画にしてアップロードしました。

〇応用
位置によって断続音にしたり、速度によっては早めに警告したりいろいろできそうですが、まずは運用が先ですので、すべて後回しとしました。


2017-06-14 設置しました。
まだ、試験運用中ですが、とりあえずは、目論見どおりに機能しています。

以上