私は日本の技術者の立場は、諸外国と比べて低いのではないかと思っています。
下記は、あるジョーク集にあった小話です。
ある人が、自動車のエンジンがかからなくなったので、修理工場へ持っていきました。
修理工場の主人は、あちこち調べたあと、ハンマーで1っか所を叩いたところ、エンジンがかかるようになりました。
主人は、その客に「修理代、100ドル」と書かれた請求書を渡しました。
客は「1っか所を叩いただけで、100ドルは高すぎる」と文句をいいました。
すると主人は、「どこが悪いかの調査代99ドル、叩き代1ドル」と請求書を書き直しました。
見えないものにお金を払わない
ジョークを解説するのも野暮ですが、言い換えると技術料99ドル、修理費1ドルということです。日本では、この目に見えない技術料99ドルにお金を払いたがりません。これが技術者が冷遇される原因だと思っています。
価値とは世界(米国)が作るもの
なぜ、お金を払わないのかというと、目に見えにくいということもありますが、もっと根本的には、お金を払うべきもの(価値)は、元からあるものではなく、世界(米国)が作るものだからです。つまり、アメリカが価値があるといったものは、価値が生まれるのです。
90年代、日本に製造業で完敗したアメリカはゲームチェンジを行います。つまりハードからソフトへの転換です。日本は、それまでの製造業での優位性を手放すことができませんでした。つまり、形あるものだけが価値あり、あとはその付属に過ぎないというわけです。製造業でいえば、形を生み出している現場の作業員は価値があるが、技術者はその付属にすぎないという価値観です。
中国の台頭で日本型製造業の終焉へ
そんなゲームチェンジが進むなか、とんでもない伏兵が現れました。日本と目と鼻の先に、人件費が20分の1で、広大な土地を持つ中国が目を覚ましたのです。これで、日本がもっていた優位性は完全に失われました。あまつさえ、中国はゲームチェンジのことも良くわかっており、米国を凌駕し、自分がゲームチェンジャーの地位を獲得すべく、全方位的に発展させています。
日本を復興させるには
遅ればせながら、まずは産業界も教育界も価値観の転換を図っていくしかないと思います。ソフトが主役であり、ハードはその入れ物にすぎないということを理解しないかぎり、技術者の地位は上がらないでしょう。技術者の地位が向上しないかぎり、日本の復興もないように思います。